収益認識基準のゆくえ

【IFRSの収益認識基準】

IFRSの導入をめぐっては、収益の認識基準について出荷時点から検収時点への変更が必要になることが各面で大きく取り上げられています。
収益の認識は、IAS第18号「収益」とIAS第11号「工事契約」がIFRSの主な会計基準となっており、ここで示されている「リスクと経済価値の移転」という考え方に照らしてみれば、通常、顧客の検収が終了しなければ売り手のリスク負担は解消しないと考えられ、そのことによって現在広く実務で適用されている出荷基準についての見直しが迫られている、との状況にあります。

【MOUプロジェクト】

一方、海外に目を向ければ、米国証券取引委員会(SEC)は、2014年から米国企業にIFRSを適用するか否か、2011年までに判断を下すとされていますが、その判断においては国際会計基準審議会(IASB)と米国財務会計基準審議会(FASB)が目下共同で進めているMOUプロジェクトの達成度を見極めることとされています。MOUプロジェクトの中の一つ、「収益認識」プロジェクトは、2008年12月に「顧客との契約における収益認識に関する予備的見解」というディスカッション・ペーパー(以下、「DP」)を公表し、今後、2010年第2四半期中に公開草案を公表し、2011年上半期中には新たなIFRS会計基準を公表するものとしています。

わが国では、上場企業にIFRSの適用を義務化することの可否が2012年に判断される予定ですが、義務化が決まれば、2015年にも予定される強制適用の時点で収益認識についての基準は、現行のIAS第18号等に代わって上記の新しい基準となっていることが予想されます。

【DPのアプローチ】

DPでは、従来の「リスクと経済価値の移転」等のアプローチとは異なる、新しい収益認識の考え方が示されています。すなわち、企業が顧客と契約を締結すると、その契約による権利(対価請求権)と義務(財・サービスの提供義務)の両者が認識されます。そして、財・サービスの提供によって履行義務が充足、消滅し、権利と義務の差額が生まれますが、この差額を収益として認識する、という考え方です。また、履行義務の充足は、顧客が約定資産の支配を獲得したとき、とされます。

イメージとしては、売買契約が成立した時に、資産側に対価を受け取る権利(売掛金のようなもの)が認識されるとともに、負債側に履行義務が(販売価格に基づいて)認識されます。この時点では資産側負債側同額で正味ゼロです。その後、売主が物を買主に引き渡すことによってその分の履行義務が消滅し、その分プラスの正味ポジションが生じる、すなわち、収益が計上される、というものです。
このアプローチによった場合、従来製品保証について製品保証引当金を計上していたこれまでの会計実務から、製品保証というサービスの履行義務の充足に従って、収益計上しなければならないことや、現行の工事進行基準による収益認識から、完成した一部分の物理的な物の引き渡し(財の支配の移転)がなければ、部分的な収益認識も行われなくなる、などの影響が考えられます。

IFRSの適用検討をプロジェクトとして始動している企業や、IFRSの適用を視野に入れながら新しい基幹系システムの構築を行っている企業においては、現行のIFRSのみではなく、FASBとIASBによるMOUプロジェクトによる新基準の検討状況もにらみながら、種々の可能性への対応の可否も検討していく必要があります。