公認会計士試験合格者等の育成と活動領域拡大に関する意見(中間)が公表されました

今年度も公認会計士2次試験の合格発表の時期が近づいてまいりました(昨年度は平成20年11月18日発表)。

監査業界としても今年度の合格者数は何人か大変注目しております(昨年度は3,625人)。その理由は合格者の方の就職(特に監査法人への就職)の見通しが芳しくないと予想しているからです。

これに関するものとして平成21年7月31日に金融庁より「公認会計士試験合格者等の育成と活動領域拡大に関する意見交換会中間取りまとめの公表について」が公表されております。
この公表は、公認会計士となるためには2次試験合格、2年間の実務経験(業務補助等)及び座学研修(実務補修)が必要となりますが、近年の合格者の急激な増加により、実務経験を積む受け入れ先(主として監査法人)の不足、実務補修の場所の不足等に起因する教育の質の維持が困難となっていることを問題点としてとらえて当面の対応策をまとめたものとなっています。

主なポイントは①経済界における周知活動②合格者が経済界で活躍しやすくなるような環境整備③合格者の意識改革④教育環境の整備⑤試験の実施等です。これらの趣旨は、合格者の受け入れ先として監査法人以外の一般企業を想定し経済界への周知を進めるとともにその環境整備(制度、就職説明会等)をすすめる。逆に合格者に対しては経済界も就職先としてあることの意識改革をすすめる。また環境面(実務補修)については一般企業在籍者を想定してカリキュラムや体制を構築することとしこれに経済界も協力するということです。

公認会計士試験の新規合格者の方にとっては厳しい環境だと思いますが、監査業界の先輩として公認会計士試験の新規合格者の方の今後のご活躍を期待するものであります。

学校法人会計において本年度以降注意すべき事項

<リース取引、ソフトウェアに関する会計処理>
平成20年9月11日付で、文部科学省よりリース取引とソフトウェアに関する会計処理について通知が出され、これを受けて平成21年11月14日に、日本公認会計士協会よりそれぞれに関する実務指針が制定されています。

これらを受けて平成21年4月1日より開始する年度から、リース取引とソフトウェアに関する会計処理が変更となっています。リース取引やソフトウェアに関する日々の会計処理をどのように行っていくのかということについては、予算立案の段階あたりから検討されているのではないかと考えられますが、計算書類の開示事項まで見据えたうえでの検討も終えられていますでしょうか?

まずリース取引とソフトウェアに関して、会計処理の変更の注記が必要となりますので、本年度に対象となる取引が生じると変更による影響額の記載が必要となります。

また、リース取引を通常の賃貸借取引に係る方法に準じた会計処理を行った場合で、リース料総額の合計額に重要性があるときは、①リース取引開始日が平成21年3月31日以前であるもの②平成21年4月1日以降の開始し、リース契約が300万以下の場合に該当するもの、の2点にかかるリース料総額の合計額に重要性があれば、「通常の賃貸借取引に係る方法に準じた会計処理を行っている所有権移転外ファイナンスリース取引」として注記が必要となります。

資産総額等の観点から、重要性があるリース料総額となる法人がさほど多くないと考えられるのですが、その重要性を判定するための集計資料の準備は事前に行っておくか、決算作業のスケジュールに織り込んでおくべきです。

<監査の品質管理>
日本公認会計士協会では、品質管理基準委員会報告書第1号「監査事務所における品質管理」第76項、監査基準委員会報告書第32号「監査業務における品質管理」第39項から委託審査制度を規定し、学校法人における私立学校振興助成法第14条第3項の規定に基づく監査業務に係る審査において、「監査意見表明のための委託審査要領」を利用する場合に必要となる審査資料の様式例を、学校法人委員会研究報告第11号「委託審査制度における審査資料の様式例」として平成21年1月14日付で公表しました。

現状では審査対象業務は、文部科学大臣所轄学校法人に係る監査業務が対象となっており、平成23年3月31日を持って終了する会計年度より審査が開始される予定となっています。

<その他>
平成21年2月17日付で「第12号 学校法人における事業報告書の記載例について」が公表され、事業報告書の詳細な記載例を見ることができるようになりましたので、多くの学校法人が依拠するものと思われます。

また、平成21年4月14日付で「第13号 キャッシュ・フロー計算書導入に係る提言」が公表され、キャッシュフロー計算書の導入が急務と指摘されており、今後は計算書類に何らかの形でキャッシュフロー計算書が導入されることになると考えておいた方がいいと思われます。

2年目のJ-SOX対応

内部統制評価報告制度が導入されてから、3月期決算のJ-SOX対象企業においては、その対応が2年目となり、はや第2四半期も過ぎようとしています。2年目においてはすでにひととおりの文書化が終わっており、新しく追加された事業拠点や変更のあった業務プロセスへの対応、運用テストが作業の中心となっている企業が大半ではないかと思われます。

適用初年度を振り返ってみれば、2009年3月期決算の会社では、内部統制に重要な欠陥があり、「有効でない」と表明した企業は56社となりました。これら企業の内部統制報告書をみると、その直接的な原因として、決算発表後や財務諸表監査時に重要な虚偽記載が見つかったか、あるいは大きな不正が発覚したというケースが目立って多くみられます。そして、そのような問題が引き起こされた根本原因として、人員不足、決算担当者の能力不足、モニタリング体制や統制手続の不備といった人的な側面での問題点が挙げられています。
反対に、虚偽記載は現実化していないけれども社内の評価で重要な欠陥が見つかり期末までに是正されなかったために「有効でない」と表明した会社は、むしろ少数派となっているように見えます。
このような開示事例から分ることは、たとえ文書化作業をきっちりと行っていたとしても、重要な虚偽記載や不正が発生すればその結果自体が重要視され、その原因が何かしらの内部統制の欠陥に求められて広く世間にむけて内部統制が全体として「有効でない」旨を公表しなければならなくなる可能性があるということです。極論すれば、どれだけ費用をかけ立派で完璧な評価文書を作成したとしても、ただひとつの重要な誤謬が発生してしまうことで、多大な費用と時間、労力をかけて一大プロジェクトとして行っていた活動が、社内で全く無意味なものだったとみなされる危険性があります。

「J-SOXの目的は監査法人の内部統制監査を乗り切ることである」とみる向きもありますが、問題が発生した時には「結果」責任が問われる、ということの恐ろしさからすれば、あまり的を得た見方ではないように思われてきます。監査法人と対峙するのではなく、むしろ監査人と頻繁にコミュニケーションを持ち、その知識、経験、能力をも活かして、問題が発生しそうな領域を聞き出し、社内で絶対に虚偽記載や不正を起こさせない、未然に防止するという活動に集中することの方がより実効性があるといえるでしょう。
2年目のJ-SOX対応を、企業をさらに強くするための契機とするためには、56社の問題事例から学び、メリハリを利かせて、本質的に問題が生じるケースの少ない領域や省力化できる部分については思い切って省力化し、他方で、企業内外に変化のあるところや関係会社など手の届きにくい領域については、本当にリスクが生じていないか、管理が手薄となっていないか、会計上の見積りや処理で検討しておくべき事項がないかを、大局的あるいは詳細にみて、十分に検討を行うということが必要になってくるのではないかと考えます。

2年目のJ-SOX対応の活動は、ゼロからの出発であった適用初年度とは異なった心構えと課題認識のもとに、緊張感をもって進めていく必要があるでしょう。